新型コロナウイルス感染症の影響で外出や人との交流を控えることで日常生活の活動量が減り、生活不活発病に陥る高齢者が増えています。生活不活発病が原因で要支援・要介護状態になるケースも少なくないため、高齢者でも自立した生活を送れるように支援する介護予防の重要度がより一層高まっています。
介護予防とは高齢者が要介護状態になることを防ぎ、要介護状態になることを遅らせ、要介護状態になっても可能な限り悪化を防止すると同時に状態の改善を目指すことを目的としたものです。要介護状態とは介護保険サービスを利用するために設けられている基準で、介護度が低い順に要支援1~2、要介護1~5の7段階あります。介護保険制度は当初、医療費の膨張を防ぐことを目的に設立されました。しかし、想定以上に介護サービスの利用者が増加したことで、その費用を抑えるために「介護予防重視」を目指した法改正が2006年に行われました。国は介護保険による高齢者の生活支援を行う一方で、国民に対して自らの努力による要介護状態を回避するための取り組みを求めています。そこで国民の義務として定められたのが、自立した生活ができる能力の維持・向上に向けた取り組みである介護予防です。
2006年の法改正については以下のサイトに詳しくまとめられていますので参考にしてください。
一般的に介護予防は「運動機能や栄養状態の改善」というイメージがありますが、実はそれだけではありません。心の状態も含めた心身機能の改善を目的に生活環境を整え、日常生活を送る上での生きがいを見出し、社会参加の機会を設けて生活の質を向上させる必要があります。国は介護予防によって国民の健康寿命を可能な限り伸ばし、生きることそのものが喜びになる長寿社会の樹立を目指しています。そのため、介護予防で行われる運動機能向上サービスはあくまで目的達成のための一手段であることを忘れてはいけません。
介護予防の対象となる高齢者はすでに心身機能の低下を経験している状態であり、「もう機能は回復しない」という誤解やあきらめを感じていることも少なくありません。精神状態が不安定で、うつ状態に陥っているケースも考えられます。そこで求められるのは、高齢者の意欲の程度や心身の状態、生活の背景を十分に配慮した上での適切な働きかけです。介護予防ケアマネジメントで重要なのは、本人が生活機能の改善に対して積極的に取り組んでもらうことです。個々の意欲や状態を加味した上で、「いつまでに・どのようにして・生活機能を改善するか」を考える必要があります。